信濃の疏水
長野地域
ホタル舞う豊かな水辺 善光寺平用水(ぜんこうじだいらようすい)
長野市のほぼ中央に位置する善光寺平は、国宝善光寺を中心に拓けた、水稲や果樹栽培が盛んな地域です。そして、この地域の農地を潤しているのが、疏水百選に選ばれている「善光寺平用水」です。
善光寺平用水は、江戸時代から裾花川を主水源としていましたが、干ばつが続くと水源が乏しくなることから、渇水期には水の利権をめぐって各地で水争いが繰り返されてきました。特に大正13年の異常渇水では、検挙者やけが人が多数出るなど、大変な騒ぎとなりました。
昭和に入り、古くから続く水争いの根本的な解決を図ろうと、頭首工や各用水施設を総合的に整備するとともに、犀川から揚水して補給水を確保する改修計画の気運が高まり、県営善光寺平農業水利改良事業(昭和6~11年)により整備がなされ、安心して農業を営むことができるようになりました。
近年、善光寺平も都市化が進み、農業地帯に灌漑すること以外に、都市部の雨水排水を受け入れる排水路としての役割も担っています。また、ホタルなど様々な生物が生息する生態系豊かな用水でもあり、近隣の小学生や地域住民による植樹などの活動も盛んに行われています。
これからも善光寺平の農業地帯に潤いを与えるとともに、「ホタル舞う豊かな水辺」は、人と生き物の憩いの場として、多くの人々の心を癒し続けることでしょう。
2009年5月掲載
◦管理団体 善光寺平土地改良区
長野地域の他の疏水を見る
- 春を待つ 埴科頭首工(はにしなとうしゅこう)
- 晩秋の静寂 鏡池(かがみいけ)
- ホタル舞う豊かな水辺 善光寺平用水(ぜんこうじだいらようすい)
- 村を潤す三堰 三水(さみず)
- 樹園地を支える 日滝原頭首工(ひたきはらとうしゅこう)
- 急流を克服した 犀口三堰(さいぐちさんせき)
- いにしえから千曲川の水を運ぶ 六ヶ郷用水(ろっかごうようすい)
- コシヒカリ産地を支える 霊仙寺湖(れいせんじこ)
- 名月を映す棚田の水源 大池(おおいけ)
- 地域の農業を守る 河東排水路(かとうはいすいろ)
- 豊富な水量で地域農業を育む 上中堰(じょうちゅうせぎ)
- 伝説に彩られた 大座法師池(だいざほうしいけ)
- 先人の偉業 三水を優良農地に変えた 芋川用水(いもがわようすい)
- 豊かな自然と水資源 軍足池(ぐんだりいけ)
- 星と緑のロマンを共に奏でる 大洞大池(おおどうおおいけ)
- 古より文化人の愛した日本の原風景 姨捨の棚田(おばすてのたなだ)