信濃の疏水

松本地域

犀川の清流をポンプアップ いくさか農業を未来に繋ぐ 揚水機場(ようすいきじょう)

長野県の中央部、東筑摩郡北西部に位置する生坂村は、県内で5番目に小さな村(面積およそ39㎢)ですが、年間を通して様々なイベントが催される、活気あふれた山村です。また、1000m近い山々が折り重り合うその麓には、北アルプスに源を発する清き犀川が北流し、山川から豊かな恵みを受ける山里でもあります。

犀川沿岸の段丘地の水田では、春から秋にかけて緑色から黄金色へと染まってゆく風景を見ることができますが、古くは水源の確保に大変悩まされていました。水田開発は、永年に亘る村民の悲願だったのです。記録によれば、江戸時代より、犀川からの引き水を何度も計画しましたが、当時の技術では上手くいかず、失敗・中止の繰り返しでした。

明治の末になると、機械力によって揚水ができるようになり、この地域でも、開田工事と併せて上生坂の『揚水ポンプ』が設置されました。しかもこれは長野県で初めて設置された農業用のポンプだったのです。当時の揚水ポンプの原動機は、蒸気機関による歯車伝導で、燃料には石炭を使い、吸水約4・2mを含め全揚程11・4mでした。この設置工事は大正元年10月に着手され、翌年6月5日、大勢の人々に見守られる中で試運転が行われました。当時の記録によると、試運転は大変劇的なものであったそうです。

現在、生坂村では13ヵ所の揚水機場が設置されており、犀川の水を台地の水田や畑に汲み上げることで、水稲や果樹などの栽培が盛んに行われています。昔から現在へと、古き良き農村を守る、地域の大切な一風景となっています。
2015年4月掲載

◦関係市町村 生坂村