信濃の疏水

飯伊地域

神秘の天然湖 深見の池(ふかみのいけ)

「深見の池」は、下伊那郡阿南町にある、面積約2.2ha、深さ約8mの農業用ため池です。
 阿南町誌によると寛文2年(1662年)あるいは3年の地震により生じた窪地に水が溜ってできたと言われています。この地域は古くからの米作地帯ですが、水田は台地上にあり、用水の確保に苦労し、多くのため池が造られました。「深見の池」もその一つで、約17haの水田を潤す重要な水源となっています。
 「深見の池」は面積に比べて水深が深く、盆地の底にあるため、風の影響が小さく池内の上下の水が混合しにくい等の理由から、普通の池にはない特徴をもっています。この池では、光合成硫黄細菌※1が、夏期、酸素のない深層の水に大繁殖します。加えて、植物プランクトンよりも光合成硫黄細菌の方が活発に繁殖し、窒素・リンなどの栄養分を吸収することから、アオコによる池の汚濁が生じることがありません。なお、光合成硫黄細菌の繁殖は、大変珍しく、国際的な学会でも発表されました。
 また、池に入る水量より出る水量の方が多いのに水が涸れないことから、湖底から相当量の湧水が流入していると考えられ、「この池には底がない」「竜宮に通じている」「諏訪湖につながっている」など、数々の伝説が生まれています。
 今でも、江戸時代から続く伝統行事として、お神輿を筏に乗せて池に浮かべ、花火を打ち上げる「深見の祇園祭」が、毎年7月第4土曜日の夜から翌日にかけて催されるなど、「深見の池」は地域の人々にとって親しみ深い場所※2となっています。

※1  硫黄を利用して嫌気的条件下で酸素を発生しない光合成を行う細菌。硫化水素や硫黄が存在する火山地域など、限られた場所にのみ生息する。
※2  県営水環境整備事業(平成5~6年度)により、遊歩道や親水護岸が整備されています。

2012年3月掲載

◦管理団体 深見の池管理組合