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信濃の疏水

上伊那地域

歴史的農業施設 外記島用水・理兵衛堤防(げきじまようすい・りへえていぼう)

上伊那郡中川村田島外記島地域の水田25haを潤す外記島用水は、天竜川から取水する農業用水である。

平成18年7月豪雨で、堤防及び頭首工が被災して河床低下したことで、江戸時代初期に名主であった松村理兵衛によって築かれた理兵衛堤防の一部が出現した。さらに、発掘調査が行われ、当時の外記島用水路の一部と思われる木製水路が発見された。

川除(築堤)工事に関する史料の絵図には用水路、水門が描かれており、また記録によると理兵衛堤防は、1750年から1808年の58年間に築造したと記されていることから、木製水路も同時期に造られたと思われる。

現地調査の結果、木製水路は紀州流の技術を取り入れた精巧な技術を随所にみることができた。

板材を堅固に組み立てて施工されていること、貴重な農業用水の確保のための漏水対策、一定の水路勾配による安定した流水の確保、水路本体の安定化など今も続く農業土木技術の原点をみることができる。

食料生産の基盤である、農地、農業用水を確保する築堤、水路施工技術は、先人たちにより培われてきた技術であり、その技術、偉業に思いを馳せ、次世代にその重要性を引き継ぐことが大切である。
2009年6月掲載

◦理兵衛堤防  松村理兵衛忠欣、常邑、忠良の三代に亘り築造された天竜川右岸に今も現存する石積み堤防

◦参考文献 ・語りつぐ天竜川「理兵衛堤防」(下平元護著)

・明治以前日本土木史(土木学会)

江戸時代の土木技術をまとめたもので木製水路の工法として紀州流、関東流などがある。

・土木工要録(内務省土木局)

明治初期の河川構造物の設計マニュアル

・農業土木古典選集(農業土木学会古典復刻委員会)